たいち

IT企業で働いています。 運動不足と体型の崩れに危機感を覚え、数年前からランニングを開始。このブログでは、中年初心者がランニングを継続するために、やったことを記録しています。

ランニング・ロジック 第1章

2026/1/30

第18話:5キロ走れる自信と、未経験の10キロ。社内チャットの「甘い罠」

11月も下旬に差し掛かったある日の昼休み。 私は自宅のデスクで、レンジで温めたばかりの弁当の蓋を開けた。 最近始めた、糖質や塩分が管理された冷凍宅配弁当だ。 彩り豊かな野菜と、鶏肉のトマト煮込み。 健康意識の高いメニューだが、私はその横に、別途用意したパックご飯(大盛り)をドンと置いた。 最近、妙に腹が減る。 以前ならこの弁当だけで十分だったが、今はこれに白米を足してもペロリと入ってしまう。 「まあ、走っているからな。燃費が変わったんだ」 栄養バランスが売りの弁当を食べているのに、炭水化物を追加しては意味 ...

ランニング・ロジック 第1章

2026/1/30

第17話:5キロ走れた私の勘違い。「俺はもう初心者じゃない」という甘い罠

それから一ヶ月が経った、11月のある朝。  目を覚ますと、窓の外は冷たい雨が叩きつけていた。 今日は走る予定の日だ。 走り始めた当初の私なら、こう思っただろう。 「ラッキー。雨だから走れないや。しょうがない、今日はサボろう」 そこには、義務感から解放された安堵があったはずだ。 だが、今の私は違った。 窓の外を見て、少し残念に思いつつも、冷静に思考を巡らせた。  走りたい気持ちはある。5キロ走れるようになった今の体力なら、雨の中でも走れないことはない。 だが、ここで無理をして体調を崩し、数日間寝込むことの方 ...

ランニング・ロジック 第1章

2026/1/30

第16話:3キロの壁を越えて。涼しい夜風が教えてくれた「継続の成果」

季節という名のブースト 10月に入り、空気の味が変わった。 まとわりつくような湿気は消え、夜風が肌をサラリと撫でていく。 金木犀(キンモクセイ)の甘い香りが、どこからともなく漂ってくる。 私はいつものように、全身黒のウェアに身を包み、左腕に青いLEDバンドを巻いて玄関を出た。 軽く足首を回す程度の準備運動だけ済ませ、すぐに走り出す。 一歩目を踏み出した瞬間、違和感があった。 良い意味での違和感だ。 体が、軽い。 夏の間、あれほど鉛のように重かった四肢が、今日は驚くほどスムーズに前へと出る。 走り出してすぐ ...

ランニング・ロジック 第1章

2026/1/30

第15話:安全は「見てもらう」こと。無灯火の自転車が私を避けてくれた夜

存在証明の光 命拾いをして帰宅した私は、すぐさまパソコンを開いた。 もう「カッコいい」とか「目立ちたくない」とか言っている場合ではない。 次に同じことが起きれば、今度は本当に怪我では済まないかもしれないのだ。 私の脳裏に、ランニング初日にすれ違った、あのランナーの姿が蘇った。 彼の腕で青白く光っていた、あのバンド。 当時は「派手だなあ」なんて他人事のように思っていたが、あれは伊達や酔狂ではなかった。 「私はここにいます」という、周囲への強烈なメッセージだったのだ。 検索ワードを打ち込む。 『ランニング ラ ...

ランニング・ロジック 第1章

2026/1/30

第14話:全身「黒」コーデの落とし穴。夜道で私が「ステルス機」になってしまった夜

闇夜のステルス機能 新しいウェアの快適さは、私のランニング生活を劇的に向上させてくれた。 吸汗速乾の黒いTシャツの下に、黒の長袖コンプレッションウェアを着込む。 下は黒のショートパンツに、これまた黒のタイツ。 そして足元には、汚れの目立たない黒の厚底シューズ。 全身を黒(ブラック)で統一した私は、夜のショーウィンドウに映る自分の姿を見て、密かに悦に入っていた。  膨張色を排除したことで、実際よりも少しだけ痩せて見える気がする。 それに、この「闇に溶け込むようなスタイル」が、なんとなく速いランナーのような雰 ...

ランニング・ロジック 第1章

2026/1/30

第13話:吸汗速乾の衝撃。あの夜のランナーが黒いインナーを着ていた本当の理由

装備のアップグレード 帰宅した私は、玄関で汗をたっぷりと吸ったTシャツを脱いだ。 「ドサッ」 床に置いた時、水分を含んだ布特有の、ずっしりとした重さを感じた。 改めて思う。私は今まで、これほど重いものを身にまとって、湿気の中を走っていたのか。 シャワーで汗を流し、体を冷やしてから、私はすぐにパソコンに向かった。 今の私に必要なのは、根性ではない。この暑さを快適に乗り切るための、適切な「道具」だ。 検索ワードを打ち込む。 『ランニングウェア 夏 涼しい』 『ランニング 水分補給 持って走る』 画面には、「吸 ...

ランニング・ロジック 第1章

2026/1/30

第12話:エンジンの熱暴走。順調な私を襲った「梅雨」という魔物

エンジンの熱暴走 6月の下旬。私のランニング生活は順調そのものだった。「頑張らなくていい」というLSDは、私の性格に合致していたし、少しずつ引き締まってきた体は自信を与えてくれた。  だが、私は甘く見ていた。四季のある日本において、ランナーにとっての最大の敵が、すぐそこまで迫っていることを。 梅雨入りと同時に、空気は一変した。 夜になっても気温が下がらない。湿度は不快なほど高い。 玄関を出た瞬間に、まとわりつくような重たい熱気を感じる。 まるでミストサウナの中を歩いているようだ。 それでも私は、「継続こそ ...

ランニング・ロジック 第1章

2026/1/29

第11話:体重は増えたのに「痩せた?」と言われた日。数字よりも大切な「確かな実感」

気づけば、私は30分以上走り続けていた。 一度も歩くことなく、一度も立ち止まることなく。 家の前に戻ってきて、時計の停止ボタンを押す。 サマリー画面を確認する。 距離は3キロちょっと。ペースは「キロ9分」。 以前の私なら「遅すぎる」と絶望していただろう数字だ。 だが、私は別の数字を見てニヤリと笑った。 心拍数のグラフだ。 最初から最後まで、低い位置で安定して推移している。一度もレッドゾーンに入っていない。 汗は心地よい程度。膝の痛みもない。 何より、走り終わった直後なのに「明日もまた走りたい」と思えている ...

ランニング・ロジック 第1章

2026/1/29

第10話:地面ばかり見ていた私が見つけた「月」。時速を捨てた先に待っていた魔法の時間

走り出してすぐ、私は強烈な違和感に襲われた。 意識して、歩幅を小さくする。 私が履いている厚底シューズは、本来スピードを出すために作られたものだ。 着地するたびに「もっと前に進もう」と反発してくる。 放っておくと、自然とペースが上がってしまいそうになる。 だが、私はあえてその誘惑を断ち切る。 「今はダメだ。基礎ができていないんだ」 自分にそう言い聞かせ、アクセルを踏み込みそうになる右足を、理性のブレーキでじっと抑え込む。 動画で言っていた「ニコニコペース」。 笑顔でおしゃべりができる速度。 それは、私の感 ...

ランニング・ロジック 第1章

2026/1/29

第9話:急がば回れのロジック。ボロボロの私を救った「頑張らない」という最強の戦略

急がば回れのロジック リビングのソファで、私は泥のように動けなくなっていた。 スマホの画面には、YouTubeの再生画面。 サムネイルの男性は、今の私とは対照的に、涼しい顔で微笑んでいる。 半信半疑で再生ボタンを押した。 動画の中のコーチは、まるで私の惨状を見透かしたかのように、穏やかな口調で語りかけてきた。 「皆さん、毎回『ゼーゼーハーハー』言うまで追い込んでいませんか? 実はそれ、初心者には逆効果なんです」 ドキリとした。 まさに今の私がそれだ。心臓が破裂するまで追い込むことが「練習」だと思っていた。 ...